#27 30年ぶり北穂高岳に挑戦その3

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2014年7月28日月曜日
標高3000mを越える山小屋の夜は満天の星。
流れ星が見れて素敵な時間を過ごせた後は、朝焼けを見るために北穂高岳山頂に立つ。
小屋から5分で行けるので助かる。すでに登山者がごった返しで賑わう。

夏山の早朝でも少し寒気があり、吐く息が白くなる。ついに日の出の時間を迎える。
朝日が懸命に雲海から顔を出そうとしている。
徐々に雲海がオレンジ色に染まり、一気に地平線にオレンジ色が広がる。
時間とともに、オレンジ色がピンク色に変わり、まるで油絵を見ているかの光景だった。

前方に見える槍ヶ岳の向こうに、雲の平、黒部五郎岳、白馬岳、剣岳がくっきり見える。
右手にはピンク色に染まる富士山も見えるではないか。

何度見ても飽きないこの光景に取り憑かれて朝食を食べることを忘れてしまった。
正気に戻った自分は、用意された山小屋の朝食を食べて、コーヒーをすすり、しばらくリッチな時間を過ごす。

3000mの上空で夏休みを過ごすことはなかなか経験できないことなのでここでゆっくりしたかった。何度も頂上に出ては眺望を楽しみ、小屋に戻ってはデッキでコーヒーの繰り返し。
時折り、入れ替わる登山者との会話も楽しいもんだ。山登りする人は裏表のない純粋な人が多いんだなぁとつくづく思う。

物思いに耽っていると10時過ぎなので慌てて身支度して気を引き締め、下山する。
下りの雪渓で足を滑らせて転倒し、かなりの急傾斜なので立ち上がることができず、仰向けの状態で、凄いスピードで急降下。。なんとかして体を止めたいのだが、加速が強く止められない。

おっまずい!

正面に岩場が見えた!

このままだと衝突して大怪我になる!
その時にとっさに体が反応し、瞬時に体を反転して横滑りにして両手のスティックを力一杯雪渓に食い込んで寸前で岩場を避けて止まる。

間一髪セーフだ。
振り返ると70mほど急降下であった。
冷や汗を通り越して生きた心地がしなかった。
ちょっと気を緩めると天国から地獄になる瞬間だった。
この映像は今でも鮮明に覚えているし、これからも忘れることはないだろう。
登山を続ける限りは。

今後の戒めとして自分の胸に刻み込むのであった。

2014年7月29日火曜日
下山後にこのまま帰るのはもったいないと思い、宿泊場所を探す。
空部屋があるというので当日電話予約をする。
上高地から1時間30分ほど車を走らせて安曇野農家民宿ごぼうでん」に17時30分過ぎに着く。

建物は文化財風の歴史ある建物だった。
朝夕バイキングは、地元の食材で田舎料理をふんだんに出してくれた。とても美味しい。
風呂から眺める田園風景と北アルプスは最高であり、疲れが抜ける。
宿泊料金もリーゾナル価格でよかった。この民宿は大当たりだ。

安曇野周辺に美術館が数多く点在しているので美術館巡りをする。
焼物展示のある長屋に入ると、さまざまな焼物が所狭しに並べてある。
そこで60歳過ぎの、一見して大泉洋に似るガイドさんから焼物の製作工程の説明を受け、焼物の魅力を知る。

自分も大皿の焼物に挑戦したいと言ったら、ガイドさんより自分の窯がある製作場所の地図を渡され、是非遊びに来ないかと誘われる。
場所は長野市のようである。

彼の経歴が興味深い。
彼は焼物を始める前は、半導体を売る営業マンだったようで日々のノルマの数字に疑問を感じ、あるきっかけで焼物に魅了されて30歳過ぎに会社を退職する。
10年以上の長い修行を経て独立した旨の話をしてくれた。
そんなに儲かっていないが日々充実しており、選択は正しかったという。
このような人生話は好きだ。応援したくなる。

人生いろいろだ。

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北穂高岳頂上からの朝焼けです。
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この風景は見飽きないです。
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雲の平方面です。
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黒部五郎岳方面です。いつか登るぞ、待ってろよ。
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朝日を浴びる奥穂高岳です。
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雲海に聳え立つ富士山です。
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笠ヶ岳はいい山容です。
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今日の山小屋の朝食です。
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ほぼ絶壁状態の鎖場です。
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穂高連峰見納めです。また来るね♪
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涸沢の水は冷たく、美味かった。