2020年8月2日日曜日
北アルプス2日目
朝5時20分に太郎平山小屋の朝食を済ませ、山装備の点検をチェックし、6時に山小屋を出る。
今日は標高2926mの百名山である薬師岳に登る。
天候は雲ひとつもない絵に描いたような青空である。
2年前に撤退を余儀なくされた悪夢のような天候とは真逆である。
早くも山頂から望む絶景を想像しながら高ぶる気持ちを抑えて前を進む。
山小屋から20分歩くと色鮮やかなテントが所々に張っていた。
ここは薬師峠のキャンプ場で薬師岳まで3時間要する。
昨日に出会った愛知から来た彼女はここで一晩過ごし、今頃は雲の平に向かって登っていることだろう。
薬師峠から急登の連続で、いくつかの沢を渡る。
高度をかせいでいることがわかる急登で息切れする。谷を登るような感じだ。
樹林帯を抜け出すと目の前に陽光が全開に見えて開放気分となる。
ガレ場岩のペンキマークに従ってガレ場を登りきると草原に出る。
ここは薬師平で、ここから槍ヶ岳が見えてきた。
槍ヶ岳を見たらテンションも上がりフットワークも軽くなる。
薬師平からケルンまでのルートがかなりの急登できつい。登山者達の顔色も苦しい表情だ。
可憐な高山植物よりエネルギーをもらい、一歩づつ地を這うように登ると、薬師岳山荘経由ケルンに
ようやく着く。
ケルンとは石で積み重ねた道標で悪天候時にこのケルンを目印に登る。
ここのケルンは確かに石で積み重ねており、また、登山地図上もケルンと表記されている。
このケルンまでの登りが急登でこれを薬師岳山頂と勘違いする登山者も多い。
ケルンから更に20分程登るとようやく9時過ぎに薬師岳山頂に着いた。
山頂からの風景は自分が思い描いた絶景であった。
槍穂高連峰、黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳、剣岳、立山連峰、白馬岳から連なる後立山連峰、白山の全て360度の大パノラマ展望だった。
昨日に登った折立の登山口から太郎平までのルートが湖水豊かな有峰湖をバックに鮮やかな緑色を縫って辿っていることがわかる。
登山者の顔も笑顔いっぱいで歓声があがる。
自分はこの絶景を存分に楽しんだ。
2年前の雪辱を果たしてよかったと安堵する。
明日は黒部五郎岳に登るために太郎平小屋に連泊する。
連泊すると顔見知りが増える。
その中でも一見して60歳過ぎの、ジェントルマン風の柔和な表情を見せるTさんは、太郎平小屋に6連泊している方だった。
会社の夏休みを利用して太郎平小屋周辺の山々に歩いており、1週間も過ごすと周辺の天候が読めるという。
Tさんいわく、今年の梅雨明けは全く期待ハズレで入山してずっと雨模様だったようで昨日からようやく太陽が見えたとか。
Tさんの他登山者情報によると梅雨明けは7月20日だとか25日、はたまた28日と予想して入山し、天気予報が全てハズレて泣く泣く下山する登山者も数多くいたと聞く。
昨日に声をかけられた雲の平から下山した男性もそのひとりだったのだ。
そのTさんも梅雨明けを外れたが、今日は薬師岳に登り、絶景を見れてよかったと素敵な笑顔。
自分が明日黒部五郎岳に登ると言ったら神妙な顔つきに変わる。
Tさんは2年前にこの小屋から黒部五郎岳に登ったものの、天候が急変して稜線上で吹き飛ばされるほどの強風が凄い威力で吹き荒らし、泣く泣く撤退。
今年も黒部五郎岳に再チャレンジし、1週間虎視眈々と狙っていたが、明日下山で時間切れになり、
諦めたという。
黒部五郎岳までの途中ルートを知り尽くしているのでルート上の特徴、注意点を自分に以下要領で教えてくれた。
・太郎平小屋から黒部五郎岳までのルートは5時間が標準時間。
・北ノ俣岳までの登りは、昨日に登った折立から太郎平小屋までの登りイメージで2時間ほどで北ノ俣岳に着く。
・ニセ北ノ俣岳があるから注意するように。
北ノ俣岳頂上手前の30分あたりの草原は気持ちがよく、高山植物も豊富である。
・北ノ俣岳から黒部五郎岳まで二箇所の山を越えるルートがあり、アップダウンが激しいのでかなりしんどい。
・二箇所の山を越えたらスコーンと高度を下げて落ちる。
そこから黒部五郎岳までの2時間は高度を登り返さなけばならない。
つまり地獄の2時間の急登が待っている。
・気になる明日の天候は、早朝まで快晴だが、途中からガスに覆われる。
尚、梅雨明けたのだからこれ以上に悪くならないから雨は降らないだろう。
・残念ながら午前10時に着くだろう、黒部五郎岳山頂はガスなので展望は期待しない方がいい。
・お昼過ぎは天気回復するだろうから、それまでは
天気が持てばいいと思いなさい。
要約すると上述であった。
黒部五郎岳に登頂できなかった無念さを自分に託すような話かたであった。
訊くとTさんは定年退職したようで余生を好きな山登りをしたかったのだが、会社から後進の指導をしてほしいと頼まれ、そのまま会社に居続けているようだ。
年収は現役時代と変わらないみたいでなんとも羨ましいと感じる次第だ。
Tさんに感謝の言葉を述べる。
Tさんの無念の気持ちを胸に抱きしめ、いよいよ闘魂の炎が燃え上がる。
薬師平と槍ヶ岳。
薬師岳山荘とケルン。
ついに薬師岳山頂に登頂。
自分が辿ったケルン、薬師岳山荘方面ルートを振り返る
北薬師岳と後方は剣岳と立山連峰。
後方に白馬岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳が見える後立山連峰。
槍ヶ岳と穂高連峰
燕岳 大天井岳 常念岳
剣岳 針ノ木岳 蓮華岳 五色ヶ原
昨日に登った折立から太郎平ルート。後方に有峰湖。
薬師岳山頂からの絶景に感動。
可憐な高山植物。
今晩はハンバーグでした。ごちそうさまでした。