#65 北アルプス紀行 最終日によもやの体調不良で大ピンチ

2020年8月5日水曜日
北アルプス5日目
最終日

4時45分に山小屋の電球点灯に目を覚ます。
周囲の登山者はバックの荷物を整理し、いつでも出発できる準備をしている。

腹が減っては戦はできないので、朝弁当と称するビニール袋を取り出し、菓子パンをかじる。
一口飲みこんだが、胃袋から嘔吐気配を感じる。
とっさに体の異変を感じた。

結局何も食べられず、5時過ぎに三俣山荘を出発。
今日は最終日であり、岐阜県新穂高温泉まで約20km弱の9時間を歩き続ける。
三俣蓮華岳双六岳の稜線を歩き、弓折岳から小池新道を伝って下山するコースである。

まずは三俣山荘から1時間かけて三俣蓮華岳を目指すのだが、登り始めから急登の連続で苦しめられる。
さすがに5日間山登りしているので疲労が溜まるのは当然であるが、足が重くいつもの軽快なフットワークがない。
ご飯摂取不足の原因なのか、とにかく馬力が出ないのだ。
14kgのザックの重さも加わり、かなりのスローペースで登る。

40分ほどで樹林帯を抜け出し三俣蓮華岳双六岳に分かれる分岐点に立つ。
この分岐点からようやく槍穂高連峰を始め、北アルプス主峰が見える高さまで到達する。

少し体が重く感じるので三俣蓮華岳双六岳を登らずにトラバース(遠巻き)して双六小屋に楽して逃げることを考えた。
とっさに三俣山荘の美人女将さんが勧めた絶景スポットを思いだす。
ここでトラバースすると絶景スポットに出合わないので敢えて苦しい登山ルートを選択した。

分岐点から20分かけてガレ場をよじ登り、標高2841mの三俣蓮華岳山頂に着く。

早朝の展望は、空気が澄んでいるので清涼感があり山肌が鮮明できれいだ。
太郎平、黒部五郎岳薬師岳鷲羽岳水晶岳を踏破した山景色を堪能する。
天気も快晴であり、気分は最高だ。

次は双六岳に向かって1時間30分にわたる稜線を縦走する。
三俣蓮華岳から双六岳の稜線は大パノラマで気持ちいい。
この稜線はずっと平坦のイメージがあったが、それなりの高低差のあるアップダウンがあり、しんどかった。

前方の笠ヶ岳が間近に迫っていることを考えると、かなり前進していることがわかる。
双六岳頂上直下の手前30分のガレ場にさしかかったところで、体が鉛のように重く、馬力が出ない。
焦らずゆっくりと一歩づつ登る。
汗がとどめもなく流れて目にしみる。

なんとか標高2860mの双六岳山頂に着くも息絶え絶えだ。
たまらず小岩に腰かけて荒くなった呼吸を整える。
しばらく下を向いたまま体を休める。

小休止後、ザックから菓子パンを取り出して食べようとするが、胃袋が受けつけない。
昨日の夕食は半分も食べれず、今朝は何も食べていない。よってエネルギー補給ができていない。
激しい登山ルートに体が反応しないのだ。

最終目的地の新穂高温泉まで残り12km6時間弱ある。
果たしてどこまで体力を持つのか。
下手すると夕刻時間との勝負にもなりかねない。

双六岳山頂からの絶景を堪能後、次の目的地である双六小屋へ向かう途中で、突如現れた光景に出合う。

「あっ!」と声をあげた。

そこは山渓雑誌で見たことがある、まさに、美人女将さんが勧めた絶景スポットに自分は立っていたのだった。

この光景を待ち望んだ自分は、しばし我を忘れて茫然自失となる。
日本にこのような素晴らしい山風景があるとは...
嫌なことも全て忘れてしまうというか。
時間が止まる感覚だ。

不思議な空間だ。

これ以上言葉が見つからず説明できない。
自分は夢中になって何度もシャッターを切った。

三俣山荘の美人女将さん
素敵な絶景スポットを紹介してくれてありがとうね!

絶景スポットから双六小屋を越えて弓折岳を登る。
日射しが徐々に強くなり、30度超える。
今朝からろくに食べていないので、体がフラフラ状態だ。
懸命に高低差のあるアップダウンに耐えてひたすら前へ進む。
やや熱中症になりかけ、さらにザックの14kgの重さが追い打ちかけるように体力を奪いつつある。

変化する山風景にカメラを取り出して写真を撮る気力がない。
ただひたすら最終目的地に早く辿り着きたい気持ちが強かったと思う。
エネルギー補給不足からくる体力低下と30度超の灼熱による熱中症寸前状況のダブルパンチを受けつつ、半分意識朦朧ながらひたすら歩を進める。

まるで地獄ロードを歩んでいるようだ。

なんだかんだいって、双六小屋からの1時間30分の下山ルートに耐えて、やっとのところで鏡平小屋に着く。
美人女将さんの言う通り、かき氷🍧を注文する。
500円は良心的な値段だ。
かき氷でいくらか元気を取り戻すが、まだ体調は良くない。

地図に目をやると最終目的の新穂高温泉まで4時間ある。まだまだ先が長いんだ。。

気合いを入れ直して鏡平小屋を11時に出発する。
灼熱が更に強まり、体力ダウンを感じる。

1時間ほど歩くと小沢にさしかかる。
Tシャツを脱いで沢水でTシャツを存分に濡らす。
ザックからコップを取り出し、沢水を掬って頭上からかけ流す。
行水そのものだ。

幾度も小沢にさしかかっては、この行水を繰り返し、息を吹き返す。
この行水が功を奏し、熱中症が収まりつつあり、
少しづつ自分を取り戻した。
4時間の苦行に耐え、なんとか新穂高温泉に15時過ぎに辿り着く。

やれやれだ。。
疲れたよ。。

さすがに北アルプスは甘くないのだ。
まさかの最終日に熱中症寸前まで苦しめられるとは。。

体調不良の原因と思われる三俣山荘のアルファ米の晩飯が尾を引く形になるが、それに耐え得る体作りをしないと、百名山達成できないと悟った。

つらい話はこれぐらいしておこう。

今晩は久しぶりに湯舟に浸かることができるんだ。
事前に予約している民宿「たきざわ」でゆっくり体を休め、夕食をたくさん食べようぞ!

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薄ら明かりの槍ヶ岳の稜線です。
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三俣蓮華岳山頂に着く。
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昨日縦走した鷲羽岳水晶岳の稜線です。
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毎度の黒部五郎岳です。大好きな山になりました。
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雲の平と薬師岳です。これも大好きな山です。
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やっぱり槍穂高連峰は様になりますね。
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これから双六岳まで縦走します。
奥に見えるのは笠ヶ岳です。
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石川県と福井県の県境にある白山です。
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双六岳に登頂。来年は笠ヶ岳にチャレンジするぞ。
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手前から焼岳、乗鞍岳御嶽山です。
いずれも百名山です。
御嶽山は昨年8月に登りました。
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絶景スポットです。
美人女将さん 教えてくれてありがとう。
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双六岳を振り返る。
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屋根が見える鏡平小屋まで一気に下ります。
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鏡平小屋で食べたかき氷と鏡平池です。
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わさび平小屋で沢水で冷やしたリンゴを食べて元気になりました。
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最終ゴールの新穂高温泉ロープウェイに到着。
長かったぁ。
お疲れさまでした❗