#120 富士山三昧 2

2021年2月20日土曜日

 

おーい ストップだ!

 

早朝の沈黙を破る男性の甲高く、上ずった声が聞こえた。

車のサイドミラーから65歳過ぎの男性が手招きして来いと指示がくる。

3台しか駐車できない狭い駐車スペースにバックした自分の車を降りて男性のもとへ歩む。

 

その男性は両手を5cm間隔を作りながら、あと数cmで3mほどの段差から落ちるところだったという。

 

午前6時過ぎでは、まだ周囲を見渡せない暗さではあるが、確かに落ちる寸前だった。

男性の車に合わせて横並びに駐車したのだが、後のスペースは湾曲になっていることに気づかなかった。

 

危機一髪だった。

その男性の居合せがなければ、確実にそのまま段差に落ちるところだった。

落ちたら山登りどころではない。

レスキューを呼ぶところだったぞ。

 

しっかりしろ!徹!

自らを叱咤する。

 

藤山寛美に似る男性は、見るからに山男風だ。

自分と同じ登山目的は三つ峠山であり、何度も登ったことがあるようだ。

 

この男性によると、先日は北口登山道から三つ峠山にチャレンジしたが、登山途中から道幅10cmしかない登山道が凍結しており、万が一、滑り落ちた場合は谷底に落ちる恐ろしい現場に立ち会ったという。

アイゼンは履いていたものの、リスクを避けて撤退して帰ったという。

 

勇気ある決断だ。

 

自分は初めて三つ峠山に登ると伝えたところ、下記の2点のアドバイスをいただいた。

 

①達磨石ルートは3時間で登頂できる最短コースだが、

 落石が多い。

 できればヘルメット着用を奨める。

 (自分はヘルメット持参せず)

②途中で氷柱つららが多くなるが、その辺りの登山道は凍結しているのでアイゼン着用を奨める。

  (自分はアイゼン持参)

 

親身になってアドバイスをいただき嬉しかった。

それではまたお会いしましょうと6時30分にその男性は登山口を出発した。

自分は10分遅れて6時40分過ぎに出発する。

 

前置きが長くなったが、今日は山梨県は河口湖に近い日本ニ百名山である標高1785m三つ峠山に登る。

 

朝飯はセブンイレブンで買った3個入りのいなり寿司だ。

マイナス温度の車中泊だったため、米粒が凍っていて全く味がしない。

空腹では体力が持たないので無理して食べて登山開始した。

 

2日間連続登山なのでいささか足が重い。

樹林帯の急坂を1時間20分しのぐと八十八大師に着く。

 

ここは山の斜面に赤い布を着せて81体はあるとされており、お地蔵さんが仲良く並んでいた。

それぞれ異なる顔の表情をしている。

歴史資料によると、ここを参拝すれば四国八十八ヵ所巡拝と同じご利益があるという。

微笑ましい光景に心が和む。

 

そこからガレ場を登ると、所々に落石注意の看板が多く目につく。

しばらく登っていくと、屏風岩あたりに多数の氷柱が一定間隔で雫を滴り落ちていた。

随所に登山ルートが凍結して歩きづらいが、アイゼンを履くところまではいかなかった。

 

山頂まで残り20分のところで、藤山寛美に似るあの男性がオレンジ色のヘルメットを着用して下山してきた。

男性が自分であることに気づき、歩速を落として再びお会いすることができた。

 

まず2時間で登頂したそのパワーとスピードに驚いた。

その男性は、屏風岩辺りを登る途中に、突然落石が飛んできて慌てて岩陰に身を屈めたという。

その後は不吉な予感がよぎり、山頂に着いてもゆっくり休まずにこのまま家路に急ぐとかいう。

一刻も早く悪夢を取り払いたいのだろうと想像に難くない。

 

再会のお礼にガムをいただき、またどこかでお会いしましょうとその場で別れた。

 

残り20分の急登をなんとかこらえて、ようやく三つ峠山山頂に2時間30分要して9時10分に到着。

雲ひとつない青空の下、富士山、南アルプス八ヶ岳丹沢山脈の峰々がくっきり見える。

 

山頂にいる登山者もついつい笑顔がこぼれる。

シャッターをお願いした50歳過ぎの男性は、今日が2021年の初登りだとか。

以前から登山したかったのだが、仕事と天気の都合でようやく今日でこぎりついたのだと。

この素晴らしい大パノラマに大満足した様子。

登山日和で良い日でよかったと素敵な笑顔。

 

皆、それぞれの気持ち、思いがあるんだなぁ。

 

下山時は落石に合うこともなく無事に登山口に戻る。

 

素晴らしい快晴と見事な大展望、そして登山者一人ひとりの思いを垣間見ることができた満足する山登りだった。

 

本日の歩行距離 5.9km 歩行時間4時間7分

走行距離 76km

 

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今日も快晴だ。6時40分登山開始。

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一歩一歩確かめるように登ります。

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富士山とお地蔵の組み合わせは珍しい光景。

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微笑ましい光景ですね。

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このような氷柱がたくさん続いていました。

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屏風岩を廻ると富士山がどーんと構えていました。

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三つ峠山山頂に到着。

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いつもながら富士山は秀麗です。

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白い銀峰が南アルプス

右から赤石岳 聖岳

手前は右から節刀ヶ岳 鬼ヶ岳 十二ヶ岳
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右から北岳 間の岳 農鳥岳

手前は黒岳
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右から塩見岳 悪沢岳 荒川岳

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杓子山
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遠くに丹沢山主脈
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大涌谷が見える箱根山
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蛭ヶ岳から檜洞丸

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毛無山(三角点)・毛無山・大見岳 https://yamap.com/users/398749 #ヤマップ

 

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