2021年2月6日土曜日
「ガチャン」と重くて鈍い音が夜明け前の沈黙を切り裂く。
登山口駐車場を探し回るも農道が暗く、不覚にも段差10cmほどに愛車の右タイヤが脱輪。
バックしても右タイヤが空回りして微動だにせず。
車から降りて前から押してもビクともしない。
周囲は農家が点在するも、まだ5時40分で静かに眠りについている時間帯だ。
警告を鳴らすわけにもいかず、はてさて夜が明けるまでこのまま立ち往生となるのか。
思わず天を仰ぎ、もはや一巻の終わりだと頭の片隅によぎる。
再度、前タイヤを確認し、左タイヤは脱輪していない。
とういうことは、左にハンドルを切っても後も前にも空回りして動かない。
では右にハンドルを切り、タイミングを見計ってアクセルを踏んで前に進むと危機一髪で車が動いて窮地を脱出する。
登山前に20分に及ぶトラブルに見舞うとは想定外だ。
この辺りの駐車場探しは、やめることにした。
登山口から30分ほど離れた河口湖畔にある西浜小学校の正門の脇にある登山駐車場に停めることにした。
前日に現地の役場へ電話で確認済みであり、6台しか停められないが、なんとかひと安心だ。
前置きが長くなったが、今日は河口湖、西湖を眼下に眺めながら縦走する、毛無山、十二ヶ岳、節刀ヶ岳、鬼ヶ岳、雪頭ヶ岳を登る。
歩行距離18km 8時間のロングコースだ。
毛無山登山口を6時30分出発。
この時間帯になると周囲が見える時間帯だ。
樹林帯の急斜面を登りきると1時間30分で標高1500m毛無山山頂に着く。
河口湖と西湖を挟む富士山が美しい。
雲ひとつない快晴でより一層美しい。
登山者がいないので、いつもの背後ポーズをセルフタイマーで激写。
次の目的地は今日の難コースである十二ヶ岳だ。
地図に危険マークが2箇所ある。
ロープと鎖が多数あり、アップダウンが激しい。
道標は一ヶ岳からカウントして十二ヶ岳まで落差の大きいアップダウンを繰り返す。
特に神経を使ったのは、雪面だ。
ところによっては凍結している雪面があり、ロープ、鎖があっても滑落する。
いちおうアイゼンは持参したが、そのまま前進する。
凍結場所を避けて木の枝元、石の上を踏みつつ前を進む。
十ヶ岳あたりから雪道から外れることに気づき、冷静に正規ルートに戻ること2回。
危うく迷路に、はまりかけた。
セーフ、セーフ、セーフと自分を激励する。
十一ヶ岳から一気に下降すると吊橋があった。
一人づつ渡れと看板が出ている。
確かに渡るとひどく揺れてスリリングだ。
渡りきると、いよいよ十二ヶ岳への最後の登りだ。
見上げると高さ100mを超える壁を登りきらなければならない。
雪凍結に苦しみながらロープ、鎖を慎重に握りつつ、ようやく標高1633m十二ヶ岳山頂に10時過ぎに着く。
自分の辿った毛無山からの縦走ルートの山風景に感動する。
富士山をはじめ、パノラマ展望を堪能した後は、次の目的地である標高1736m節刀ヶ岳山に向かう。
ここは北側斜面なので雪がたっぷりあり、雪解に時間がかかりそうだ。
1時間ほどで節刀ヶ岳山頂に着く。
山頂にアイゼンを履いている一人の60歳前後の男性がいた。
訊くと王岳から縦走したようで、これから十二ヶ岳へ向かうと言う。
山頂から見える南アルプスをはじめ、周囲の山々の名前を言い当ていた。
なんでも百名山は89座踏破しており、富士五湖周辺の山々もほぼ踏破しているという。
今日の天気は無風で暖かく、雲ひとつない快晴で景色も最高ですねと素敵な笑顔。
自分は毛無山からアイゼンなしで縦走してきたと言うと少し驚いていた様子だ。
なぜ履かないの?と訊かれ、まぁその少し面倒なのでと返したら苦笑いを浮かべていた。
節刀ヶ岳から次の目的地である鬼ヶ岳へは1時間の雪道コースだ。
最後の急斜面を登りきると、見覚えのある鹿のツノの形をした天然岩が見えて標高1738m鬼ヶ岳山頂に着く。
ここからも南アルプス、八ヶ岳、北アルプスなど遮る雲ひとつもなく、全てが一望できた。
次にお花畑で富士山の絶景地である雪頭ヶ岳山頂を15分で辿り着く。
雪頭ヶ岳山頂は3回目だが、今日の眺めが一番だ。
大きくオープンされた西湖の上に立つ富士山はまことに秀麗そのものだ。
居合わせた40歳前後の男性に写真を撮ってもらう。
お互いに最高の眺めですねと声が弾む。
腕時計は13時10分を過ぎていた。
あとは下山するだけだが、根場(ねんば)入口バス停15時7分発の周遊バスに間に合わせる必要がある。
コロナの影響でバスが減便して一日3本となり、15時7分が最終バスなのだ。
これに乗り遅れると、愛車が駐車している西浜小学校の登山駐車場まで延々とアスファルト道路を1時間20分トボトボ歩くハメになるのだ。
いつもよりピッチを上げて下山する。
1時間40分で下山し、なんとか最終バスに間に合い安堵する。
ほどなく二人の男性がやってきた。
雪頭ヶ岳山頂で写真を撮ってもらった方だ。
彼らは午前7時過ぎに最寄りの電車に乗り、現地に着いてからコロナ影響によるバス減便を知り、慌てたという。
本来なら雪頭ヶ岳から先の山を行きたかったようだが、最終バスに合わせるために諦めたとか。
この二人は会社の職場仲間のようだ。
コロナでリモートワークとなり、会社の業績も悪く見通しも暗いとか。
久しぶりの登山で雪頭ヶ岳山頂からみた富士山の素晴らしい眺望に満足し、少し元気をもらった旨の会話があった。
その話を訊いた自分も気持ちが前向きになり、清々しい気分になった。
本日の歩行距離 18km 歩行時間8時間
走行距離154km
毛無山山頂は貸切状態でした。
一ヶ岳からカウントして十二ヶ岳へ登ります。
雪、ロープ、鎖に悪戦苦闘。
スリリングな吊橋を渡る
十二ヶ岳への急斜面の登り。
十二ヶ岳山頂からの富士山。
節刀ヶ岳山頂からの富士山
毛無山から十二ヶ岳の縦走ルートを振り返る。
中央は黒岳 奥は三つ峠山
河口湖大橋 富士河口湖町 杓子山
北側斜面は雪がたっぷりあります。
鬼ヶ岳山頂
金山、節刀ヶ岳を振り返る。
右に塩見岳
雪頭ヶ岳山頂からの絶景をお楽しみください。
なんとか最終バスに乗れました。