2021年8月2日月曜日
午前3時車中より起床。
車から外に出て夜空を見上げると星⭐️がキラッキラ。
好天を約束する夜空だ。
手際良く身支度をすませて、ヘッドランプを装着して午前3時30分過ぎに開聞岳山麓自然公園を後に出発する。
薩摩半島の南端にあり、均整な姿から「薩摩富士」ともいわれる。
山頂から遮るもののない独立峰である。
開聞岳の眺望は、東シナ海が広がる絶景だと事前に山友さんから情報を得ており、この日を楽しみに準備を進めた。
あとは好天を祈るばかりである。
午前3時30分過ぎに出発した理由は、山頂からの御来光が5時30分過ぎに拝めるからだ。
標準時間は登り3時間であり、自分のフットワークからすると、2時間で登頂できると過信した。
なので御来光に間に合うとたかをくくっていた。
この過信は木っ端微塵に砕かれることになるとは想像に難くない。
開聞岳の登りは海抜0メートルからスタートし、ほぼ直登で7合目から山頂まではエグるように巻きながら登る一歩道のなかなかのハードコースだと山友さんはいっていた。
まぁマイペースで登ればなんともないだろうと自惚れていた。
ところが、出だしから一向に調子が上がらないのである。
体が重く足が鉛のように引きずる感じだ。
原因は明らかに睡眠不足だった。
昨夜は20時過ぎに早く就寝したものの、熱帯夜にうなされて額に汗💦が噴出。
開聞岳の御来光にエキサイティングして体が火照ってしまって就寝できず、ほぼ睡眠時間はゼロだった。
睡眠不足は体に悪影響を与え、かつ発熱状態だ。
それでも御来光を見たさにハードな直登ルートに耐える。
だが3合目過ぎてから雲行きがおかしくなり、雨☔️が降り始め、一気にトーンダウン。
着たくないけど仕方なくレインウェアを着る。
4時30分過ぎに3合目を通過。
暗闇の樹林帯の中を粛々と急登を登る。
5合目あたりで周囲が明るくなり、ヘッドランプを取り外す。
本来ならば5合目は、森林樹帯から抜け出して錦江湾に浮かぶ桜島、大隅半島、池田湖等が眺望できるシーンであるが、すでにガスに覆われて真っ白だった。
体は依然として鉛のごとく重く、ペースが上がらず、おまけにやや発熱状態だ。
標準時間より40分遅れて5時40分を回っており、時間的にも展望的にも山頂からの御来光は絶望的だ。
展望がない真っ白なガスの中を、山腹の東面から南東面を巻くように登ると7合目の道標が立つ。
すでに息が上がり、ここで15分ほど休憩する。
あぁなんにも見えないなぁ。
それにしても体調は最悪だ。
脱力感が半端ない。
こんな体調で何時に山頂に着くのか。
九合目を過ぎると、岩場が多くなる急斜面をしのぎ、ハシゴを登って木や岩をつかまって急登を登りきると、午前7時過ぎに待望の開聞岳山頂に着いた。
案の上、ガスで展望ゼロ。
周囲を見渡すと、どうやら山頂1番乗りのようだ。
おいおいおい、なにも見えないで真っ白な世界で登頂記念撮影かよ。。
空を見上げると、風が東から西へ強く流れており、
太陽も見え隠れしている。
この天候状況を見て1時間後に晴れて絶景が見えると推察した。
山頂でなにもすることがないので、朝飯分のおにぎりを2個食べてゴロンする。
7時30分過ぎに40歳代後半の夫妻が、身軽なトレーニングウェアをまとって山頂に着いた。
その靴音に促され、目が覚める。
この夫妻は、静岡在住の方で電車で静岡から神戸に乗り、神戸からレンタカーを借りて香川、愛媛を走り、三崎港からフェリーに乗船して大分の佐賀関港に着く。
そして百名山である、祖母山、久住山、阿蘇山、霧島山を登り、開聞岳に辿り着いたんだって。
夫妻によると、霧島山は、雨☂️にたたれたが、祖母山、九住山、阿蘇山は快晴に恵まれて絶景を楽しんだというお二人方の笑みと、目がキラッキラ輝いていたのが何よりも物語っている。
自分も逆方向だが、これから霧島山、阿蘇山、久住山、祖母山に登るのだが、天候に恵まれたとは羨ましい限りだ。
さらに夫妻は、これから先は開聞岳から鹿児島駅でレンタカーを乗り捨てて、屋久島まで乗船して百名山である宮之浦岳登るという。
俺と全く同じコースじゃないか。。
夫妻と会話が弾んだところで、7時45分過ぎに東京からソロで来た、50歳のナイスガイが山頂に到着した。
このナイスガイは、Mさんという。
Mさんは、羽田空港から鹿児島空港に飛んで船で屋久島に渡った。
コロナ禍で飲食店を休業し、国から支給されたお金で
開聞岳に来たという。
昨日までは2泊3日で宮之浦岳をはじめ、屋久島の主要な山をことごとく制覇したとのこと。
朝陽を浴びる宮之浦岳に感動して涙を流したという熱血漢だ。
ハートが純粋な方なんだろうなぁ。
この方も快晴に恵まれ、屋久島の絶景を堪能した模様。 羨ましい限りだ。
晴れ男、晴れ女がこの山頂に集い、役者が揃った。
すると予想通り、1時間経過後の8時すぎに風向きが変わった。
気温が上昇し、流れるガスが途切れ途切れになり、ついにスパーンとガスが切れて視界が開いたのだ。
ついに眼下に広がる東シナ海、桜島、大隅半島、池田湖、霧島山等、今まで眺望できなかった絶景の全容が姿を現した。
山頂に居合せた、静岡在住の夫妻、ナイスガイのMさんのボルテージが上がり、大興奮❗️
この絶景をバックに一人づつ代わって忙しくシャッターを切った。
ついにガスが消えて絶景!
この絶景を見たかったんや!
静岡在住の奥さんが、喜ぶ自分の背中姿を10枚ほど撮ってくれました。
ありがとう!
池田湖と桜島が見えます。
この角度は函館山から見る光景となんとなく同じだなぁ。
Mさんが屋久島が見えると興奮気味。
また来るぜよ。
興奮も覚めて、少しずつ時間が流れた。
しばらく間を置いて自分から切り出した。
実は明日鹿児島から屋久島に行くフェリー乗船予約済みであり、宮之浦岳に登山予定であるが、体調不良で屋久島行きを断念する旨を伝えた。
すると静岡在住の夫妻が顔色を変えてこう言った。
何故行かないのか!
一緒に行こうよ!
鹿児島まで来たんじゃないの!
ナイスガイのMさんは、怒り顔でこう言う。
雨☂️が多い屋久島は明日から4日間は快晴で絶好の登山日和だ!
絶対に行くべきだ!
宮之浦岳に登るべきだ!
朝陽を浴びた宮之浦岳に涙を流して感動したMさんだけに説得力があった。
自分は彼らの言葉に勇気をもらい、全身にみなぎるパワーが湯気立つように奮い立った。
よし!体調次第だが、行くことにしよう!
そう言って山頂で皆に別れを告げて下山した。
下山ルートは登りルートと同じ一本道だ。
だが、鹿児島の太陽はパンチ炸裂の如く蒸し暑い。
灼熱化された鹿児島の太陽は容赦なく照り続ける。
結局、体調は戻らず、トボトボ状態でいつもより、スピードがまるでなく、足を引きずるように歩く。
灼熱にやられた。
たまらず自動販売機に向かい、冷たいコカコーラを飲み干す。
いくらか息を吹き返すが疲れがひどい。
灼熱の中、ようやく登山口に辿り着く。
それにしても暑かったな。
疲れを癒すために指宿の有名な砂蒸し温泉でじっくり休もう。
砂蒸し温泉までのドライブ途中にいくつかの観光メッカに立ち寄る。
山登りから解放された、旅の醍醐味でもある。
ひまわり🌻と開聞岳のコラボ最高でした。
JR日本最南端の駅は西大山駅です。
はるか遠くに来たもんだ。。
黄色い郵便ポストって珍しいなぁ。
椰子の木を見るとまさに南国に来たって感じ。
指宿にて。
テレビで有名になり、人気の温泉になった指宿市の山川にある砂蒸し温泉「砂湯里」と「たまて箱温泉」の温泉セットに入浴。
目の前の海を眺めながら砂蒸しは極楽だ。
「たまて箱温泉」は大海原に浮かぶ開聞岳を眺めながら温泉に浸るのは贅沢だ。
露天風呂はプールのように広い。
カンカン照り続く日差しは水風呂で暑さをしのぐ。
砂蒸し温泉「砂湯里」です。
ここの砂蒸しは熱いけど🥵気持ちよかった。
偶然にも当温泉のフロントで、風呂上がりのMさんに再会し、思わず握手を交わす。
MさんのYAMAPのペンネームや当ブログの紹介等情報交換した。
東京でMさんの経営する飲食店で再会できたら凄いなぁ。
砂蒸しに入りながら海を眺めるって最高。
開聞岳は均整な姿をしているなぁ。
ついさっき、登ってきたんだよなぁ。
交互に入りつつ、少しずつ体調は戻りつつあるが、この体調で灼熱の屋久島、登り片道8時間を要するハードな宮之浦岳に登れるとは考えがたい。
先月の中央アルプス空木岳登山時で味わった、あの体調不良で大苦戦したことを思い出す。
「たまて箱」温泉を後にして鹿児島市内方面へ車を走らす。
だめだ。
脱力感がひどい。
体調は最悪だ。
屋久島どころではない。
下手したらこのあと計画している霧島山、阿蘇山、久住山、祖母山は、登山不可能な最悪な体調になりつつあるかも。。
登山地図を眺めては、1時間30分の山登りが3時間要するように感じられる。。
もう無理だ。
屋久島フェリーのキャンセル期限は今日の17時までだ。
ギリギリに粘ったが、灼熱と8時間の急登に耐える体力は残されていなかった。
たまらず、16時50分に屋久島フェリーに電話し理由を伝えて無料キャンセル。
開聞岳山頂で会った彼らに裏切る思いがして胸が痛くなった。
すっかり気落ちした自分はかみさんに電話を入れる。
明らかに体調がオカシイ。
かかりつけの病院で精密検査を受ける。
なのでこのまま帰ると伝えた。
かみさんは非常に驚いていた。
過去に北海道、四国、東北、信州、北陸等のドライブひとり旅武勇伝は、途中で撤退することはなかったのだから。
そしてかみさん一言。
もう還暦なんだし、身体がガタついているかもしれないし、特に脳の精密検査を受けたほうがいいと。
内臓、足ではなく、脳か。。
目の前が真っ暗になった。
これから往路と同じ1400kmを走って家路を急ぐのかと思うとドドーンと疲れが出た。
かといって帰る途中に宮崎、熊本、大分の観光地に立ち寄る気持ちにもなれなかった。
山登りできなければ観光する気持ちにもなれない。
とにかく東京へ一直線に帰ろうという気持ちが強く、ほぼ固めつつあった。
やたら野菜をたくさん食べたくなった。
鹿児島名物の黒豚、ラーメン等どうでもよかった。
鹿児島市内にあるガストで野菜サラダ食べ放題のハンバーグを食す。
体調不良による食欲はないものの、なんとか野菜サラダは4皿、カレーライス、ハンバーグを食べて明日のエネルギー補強はしたつもりだ。
海沿いに指宿方面に戻るような感じで30分ほど走らせ、20時過ぎに道の駅「喜入」に着いた。
今晩の車中泊の場所だ。
ほんとに明日東京へ帰るのか。
俺は一体何しに九州に来たのか。
何のための準備だったのか。
そんな自問自答を繰り返し、不甲斐ない自分を責め、
そのまま横になった。
百名山89座 残り11座
開聞岳の歩行距離7.2km 歩行時間7時間40分