2020年9月7日月曜日
3日目
なかなか深い眠りに入らない。
理由は、念願のトムラウシ登山が実現できる興奮と往復12時間の長丁場への体力不安、ヒグマ出没の恐怖によるものだった。
浅い眠りから目を覚ましたのは深夜1時30分過ぎだった。
深夜2時に登山開始と決めていたのですでに登山モードに入り、手早く身支度をすませて登山口を出発する。
今日は、標高2141mの百名山であるトムラウシに登る。
往復18.4km12時間の長丁場である。
ここでトムラウシについて簡単に説明。
トムラウシとはアイヌ語で「花が多いところ」「水垢が多いところ」の意味らしい。
トムラウシは、北海道中央部にある美瑛町と新得町の境に位置している大雪山の奥座敷である。
夏でも天候が崩れると体感温度が極端に低くなる。
2009年7月に団体ツァーの登山者8人が遭難したことは記憶に新しい。
決して侮れない山であり、気持ちを強く持って挑もうと覚悟して登る。
隣の神戸ナンバーの登山者はすでに登っているようだ。
3週間前に好日山荘登山店で購入した、ヘッドランプを装着して登る。
このヘッドランプは非常に輝度が高く、先がよく見えるのでとても心強い。
空を見上げると月から青白い光を放っている。
満天の星が輝き渡り、手が届きそうだ。
東方にオレンジ色の光が放っている。
まるで今日の好天を約束しているかのように。
すっかりヒグマの恐怖は消え失せ、ヘッドランプの光を頼りに暗闇の中へ登り続ける。
4時30分過ぎにコマドリ沢出合に着く。
まだ暗いが、少しずつ薄ら明かりに変化しているようだ。沢水を手で掬って飲む。
コマドリ沢出合は、ヒグマが出没する頻度が高いと訊いていたが、その気配は感じられなかった。
コマドリ沢出合からガレ場の急登を1時間登りきると前トム平に着く。
ここで好天予想も天候が急変する。
風が強くなり、にわかにガスが押し流されて視界が悪くなる。
雨気配を感じたので急ぎ雨具に着替える。
ここでコンビニで買ったおにぎりを2個食べて頂上まで2時間弱の体力補給を行う。
前トム平から急登に耐えるとトムラウシ公園に着くも残念ながら視界ゼロで何も見えない。
霧雨が強く、時折メガネレンズが曇るので手で拭くありさまだ。
とにかく登山ルートから逸脱しないことだけを考える。
曇るメガネレンズから必死にガレ場のペンキ印を探しつつ登ることを集中した。
こんなところで遭難してたまるかの気持ちが強かった。
視界ゼロのガスの中をひたすら前進し、7時50分に
遂にトムラウシ山頂に着いた。
期待していた展望は望めなかったが、残念無念の気持ちよりも、やり遂げた達成感が強かったと思う。
ガスの上空から太陽が時折見え隠れするので、もしかしたら晴れ間を期待したものの、寒風で身体が冷える。
そそくさと8時20分に下山開始した。
往路と同じルートを辿って下山するのでいくらか気持ちが楽になった。
10時過ぎにいくらか霧雨が落ち着き、気温が上昇して涼しくなった。
またトムラウシ公園に戻り着いた時は、少しずつガスが晴れてきた。
晴れたトムラウシ公園は、奇岩と巨岩に囲まれた、さながら巨大な日本庭園といった感じで見応えがあった。
トムラウシから下方は、すでに紅葉が始まっていた。
もう秋色なんだ。
トムラウシ公園から30分ほど下山し、前トム平が見える。
登りはガスで真っ白だった前トム平は、辺り一面紅葉が始まろうとしていた。
今日の最高のビューポイントだった。
後から追いつかれたソロ登山者から、山頂はガスで視界ゼロでがっかりしたけど、ガスが抜けて雄大な山々や紅葉が見れて良かった。
この風景がなければ、ただ登頂しただけだと素敵な笑顔。
全く同感だ。
山の天気は変わりやすい。
好天予想も天候急変があることをしかと受け止めることが大事だ。
予定通りに14時前に登山口に着いた。
やっぱり往復12時間の長丁場だった。
無事に下山し、ヒグマに出会わないで良かったと安堵する。
百名山76座達成 残り24座
深夜2時でもヘッドランプでこんなに明るくなります。
月が青白い光を放ち心強かったです。
カムイ天上のネーミングがいいね。
前トム平からガス。
トムラウシ公園もガス。
トムラウシ登頂。晴れてください。
トムラウシ公園は紅葉が始まりました。
ようやく青空。
前トム平も晴れてきた。
紅葉が走っています。
コマドリ沢出合の水は美味だった。
またカムイ天上に戻りました。
ようやく登山口に下山。お疲れさまでした。